○吉川松伏消防組合集団救急事故対策計画
令和3年2月5日
消本訓令第2号
吉川松伏消防組合集団救急事故対策計画(平成23年吉川松伏消防組合消防本部訓令第3号)の全部を改正する。
(目的)
第1条 この訓令は、吉川松伏消防組合救急業務に関する規程(平成20年吉川松伏消防組合消防本部訓令第11号)第45条に基づき、救急業務のうち、傷病者が集団的に発生した事故(以下「集団救急事故」という。)の救急対策について定める。
(定義)
第2条 この訓令において集団救急事故とは、消防法(昭和23年法律第186号)第2条第1項第9号に定める救急業務の対象となるもののうち、次の各号のいずれかに該当する事故が発生した時とする。
(1) 傷病者が10人以上の事故
(2) 救急隊4隊以上を集中的に運用する必要が予想される事故
(3) 消防長が前2号に準ずると認めた事故
(出動基準)
第3条 集団救急事故の発生した場合における出動計画は、吉川松伏消防組合警防規程(平成25年吉川松伏消防組合消防本部訓令第3号。以下「警防規程」という。)第40条の規定に基づき出動する。
(活動の原則)
第4条 集団救急事故の現場活動は、付近の医療機関及びその他関係機関と連携し、傷病者の効率的な救護にあたるとともに、傷病者の適切な選別を行い、重症者を最優先として必要な応急処置を実施し、それぞれの傷病者に適した医療機関へ搬送することを原則とする。
(最先着隊の初動活動)
第5条 最先着隊は、次に掲げる順序により初動活動にあたる。
(1) 二次災害防止のための安全確保(警戒区域の設定)
(2) 災害の状況把握と報告
ア 災害状況の把握(災害発生場所、事故概要、傷病者及び要救助者の数)
イ 必要とする隊及び資器材の応援要請
ウ 後着隊の進入並びに退出路の確保
(3) 傷病者及び要救助者の救出救護
(4) 状況に応じ傷病者集積場所、救急指揮所及び応急救護所の設定
(現場指揮本部)
第6条 現場指揮本部(以下「指揮本部」という。)は、次に掲げる活動にあたる。
(1) 指揮活動に最適な場所への指揮本部設定
(2) 活動方針の決定、活動隊の統括指揮
(3) 状況に応じ、救急指揮者の指名、救急指揮所及び応急救護所の設置
(4) 医療機関の収容状況等の調査
(5) 医師等の現場要請
(6) 別表第5 傷病者伝票(以下「トリアージタグ」という。)の保存、管理
(7) 集団救急事故傷病者一覧表(様式第1号)の作成
(8) 現場広報
(9) 救急救助資器材の補給
(10) 警防本部との連絡調整、その他指揮活動上必要な事項
(救急指揮所)
第7条 指揮本部は、集団救急事故現場における傷病者数等の状況により救急活動拠点を設ける必要がある場合、救急指揮者を指名のうえ救急指揮所を設置し、次に掲げる活動にあたらせる。
(1) 傷病者の重症度による分類(以下「トリアージ」という。)
(2) 搬送順位の決定
(3) トリアージタグの保存、管理
(4) 集団救急事故傷病者管理シート(様式第2号)の作成
(5) 傷病者掌握管理
(6) 応急救護所の運営管理
(7) 指揮本部との連絡調整
(警防本部)
第8条 警防規程第3条の規定に基づき、招集が必要となる大規模事故など状況に応じて、消防本部内に警防本部を設置し、次に掲げる業務を行う。
(1) ブロック幹事消防本部、消防相互応援要請消防局本部などの関係機関との連絡調整
(2) 特設隊の編成
(3) 報道機関の対応
(応急救護所)
第9条 集団救急事故現場における傷病者数等の状況により救護活動拠点を設ける必要がある場合、原則、指揮本部の指示により応急救護所を設置する。
2 応急救護所は、次の事項に留意し設置する。
(1) トリアージシート又はロープ等により区域を明示し、重症度分類によって傷病者の搬入位置及び搬送順位を指定しておく。
(2) 指揮本部との連絡が容易で二次災害、活動障害等のおそれのない最も適した場所に設置する。
(3) 救急車等の進入、退出等のルートを確保しておく。
(4) 応急救護所が容易に視認できるよう標旗等を掲出しておく。
3 応急救護所の編成、任務及び担当は、別表第1のとおりとする。
4 応急救護所の設置に必要な資器材は、別表第2のとおりとする。
(傷病者集積場所)
第10条 集団救急事故現場が次に掲げる状況である場合、原則、指揮本部の指示により一時救出場所となる傷病者集積場所を設置する。
(1) 事故発生現場の危険度が高い場合
(2) 事故発生現場から現場応急救護所までの距離が長い場合
(3) 迅速な担架等による搬送が困難な場合
2 トリアージタグの取扱いは、次に掲げる事項に留意する。
(1) 知り得た範囲で記入し、時間の浪費を避け救命率の向上を図る。
(2) 装着優先部位は、右手関節部とし、負傷等がある場合は、左手関節部、右足関節部、左足関節部、頸部の順とする。
(3) 軽症化の区分変更は、現タグ上に新たなタグを追加し、旧となるタグに大きく×を入れる。
3 トリアージタグのフローは、別表第6のとおりとする。
(傷病者搬入搬出等の流れ)
第12条 集団救急事故現場における傷病者の応急救護所等への搬入、病院搬送への搬出までの全体フローは、別表第7のとおりとする。
2 傷病者の応急救護所等への搬入、搬出及び搬送は、次に掲げる事項に留意する。
(1) 傷病者集積場所を設置する場合は、状況に応じ先着隊により別表第3に基づき1次トリアージにあたるトリアージポストを配置する。
(2) 傷病者集積場所及び応急救護所を設置する場合は、状況に応じ別表第4に基づき応急救護所にて2次トリアージを実施する。
(3) 搬入搬出は、担架又はサブストレッチャーを使用し、原則、メインストレッチャーは使用しない。
(4) 事故現場からトリアージポスト、応急救護所等への搬入は、一定方向とする。
(5) 応急救護所等への救急車の進入は、一定方向とする。
(6) 医療機関への搬送は、事故現場への往復を念頭に入れ、円滑に医師等に引継ぐものとする。
(通信指令業務)
第13条 指令室は、その機能を活用して、次に掲げる業務を行うものとする。
(1) 活動隊への通信連絡
(2) 災害等の状況把握、情報収集及び提供
(3) 現場指揮本部の補完及び無線統制
(4) 医療機関及び関係機関等との連絡調整
(5) 職員の非番招集
(6) その他必要な事項
2 前項第4号の関係機関は、次に掲げる機関とする。
(1) 吉川警察署
(2) 吉川松伏医師会
(3) 吉川市役所・松伏町役場
(4) 第8条第1項第1号に掲げる機関
(5) その他必要な機関
(活動要領)
第14条 集団救急事故現場における活動隊の編成及び任務は、次のとおりとする。
(1) 救助活動
ア 要救助者の検索、救出等の救助活動は、救助隊又は消防隊がこの任務にあたる。
イ 救助活動のほか、必要に応じ傷病者の応急救護、避難誘導、現場の二次災害防止を行う。
ウ 重症者の救出にあたっては、救急隊等及び医療関係者と連携を密にして行う。
エ 救出、救護完了後は、指揮本部の指示により担架搬送、情報収集等にあたる。
(2) 担架搬送
ア 傷病者を応急救護所等まで搬入する担架搬送は、消防隊、特設隊又は消防団員がこの任務にあたる。
イ 歩行不能者は迅速かつ安全に担架搬送し、歩行可能者は介添又は誘導を行い、指定場所に搬入する。
ウ 傷病者のトリアージ区分と同区域に搬入し、重症者を搬送する場合は救急隊等の指示どおり搬入する。
エ 担架搬送等完了後は、応急救護の支援にあたる。
(3) 応急救護
ア 傷病者の観察、トリアージ、応急処置等の応急救護は、救急隊等がこの任務にあたる。
イ 傷病者集積場所及び応急救護所において1次及び2次トリアージ、応急処置を実施し、医療従事者がいる場合は、その補助にあたる。
(4) 救急搬送
ア 応急救護所等から医療機関への搬送は、救急隊等がこの任務にあたる。
イ 医療機関への搬送は、原則、指揮本部又は救急指揮所の判断によるものとし、搬送時に傷病の程度、搬送人数、搬送先その他必要な事項を指揮本部又は救急指揮所に連絡する。
(医師要請)
第15条 指令室又は警防本部は、指揮本部から医師による現場処置、治療の要請又は現場状況の必要性により、吉川松伏医師会、医療機関などへ医師等の派遣を要請する。
(警察要請)
第16条 指令室又は警防本部は、指揮本部からの要請又は現場状況の必要性により、吉川警察署へ派遣を要請し、交通規制、警戒区域の設定、二次災害防止などの協力を求める。
(消防機関の応援要請)
第17条 指令室又は警防本部は、指揮本部からの要請又は現場状況から吉川松伏消防組合の消防力での対応が困難と判断する場合、消防相互応援協定又は埼玉県下消防相互応援協定(以下「協定」という。)に基づき、消防局本部又は地域代表消防機関(第4ブロック幹事消防本部)に応援を要請する。
(消防団の出動)
第18条 指令室又は警防本部は、指揮本部からの要請又は現場状況に応じて、吉川市管内においては吉川市消防団、松伏町管内においては松伏町消防団に出動を命じる。
2 消防団は、次に掲げる活動にあたる。
(1) 警戒区域の設定、二次災害防止
(2) 担架搬送
(3) 応急救護の補助
(4) その他指揮本部の指示による活動
(情報収集・広報)
第19条 指揮本部は、活動隊から定期的に情報を取りまとめ記録のうえ、指令室又は警防本部へ報告する。
2 集団救急事故の傷病者に関する事項は、指揮本部が統括管理のうえ、集団救急事故傷病者一覧表(様式第1号)に記録する。
3 指揮本部は、周辺住民に拡声器等を活用し、災害現場における二次災害、危険防止及び避難等を重点に現場広報を行う。
4 救急指揮所は、集団救急事故傷病者管理シート(様式第2号)に傷病者情報を記録する。
5 警防本部は、報道機関等に、速報、中間報及び確定報などにより段階的に対応する。
(訓練計画)
第20条 集団救急事故における図上、部分及び総合訓練を定期的に実施し、検証を踏まえ計画の効果的な運用を図る。
附則
この訓令は、令和3年2月15日から施行する。
別表第1(第9条関係)
応急救護所における班編成等
担当 | 任務 |
トリアージ (原則2人1組) | ・傷病者のトリアージ ・トリアージタグへの傷病者番号の記録 ・傷病者に対するトリアージタグの表示 ・収容場所を指示 |
応急処置 | ・救急処置 ・傷病者管理 ・トリアージタグへの傷病者氏名等の記載 ・医療従事者の活動補助 |
搬送指示 | ・搬送順位の決定 ・救急車へ収容人員の調整 |
※現場医師による指示があった場合、この限りではない。
別表第2(第9条関係)
応急救護所の設置に必要な資器材
No. | 資器材名 | 数量 |
1 | テント(エアーテント) | 1張 |
2 | 簡易ベッド | 8個 |
3 | 救護所標旗 | 1枚 |
4 | 救急指揮所標旗 | 1枚 |
5 | 机 | 必要数 |
6 | 照明設備 | 2基 |
7 | 立ち入り禁止テープ | 必要数 |
8 | トリアージシート | 各色1枚 |
9 | ブルーシート | 5枚 |
10 | 搬送用担架 | 10本 |
11 | 腕章 | 20枚 |
12 | トリアージタグ | 100枚 |
13 | 保温用毛布 | 20枚 |
14 | 三角巾 | 200枚 |
15 | 滅菌ガーゼ | 200枚 |
16 | サージカルテープ | 20個 |
17 | 弾性包帯(10cm) | 30巻 |
18 | 副子(大・中・小) | 各20本 |
19 | 感染防止資器材(感染防止衣、手袋、マスク) | 必要数 |
20 | 筆記用具 | 一式 |
21 | その他必要な資器材 | 必要数 |
別表第3(第11条関係)
緊急度分類表(1次トリアージ)
※橈骨動脈の触知に加え、以下の循環不全の徴候いずれかを伴う場合、区分Ⅰ(赤)と判定することを妨げない。 1 皮膚の蒼白、冷汗 2 触れるが微弱 3 頻脈(120回/分以上)、徐脈(50回/分未満) |
別表第4(第11条関係)
緊急度分類表(2次トリアージ)
区分Ⅰ 緊急治療群 タグ識別色 赤色
次の具体的症状のいずれかに該当する場合 第1段階 生理学的評緬 (1) JCSⅡ桁以上、GCS8以下 (2) 呼吸数30回/分以上、10回/分未満 (3) 脈拍120回/分以上、50回/分未満 (4) 収縮期血圧90mmHg未満、200mmHg以上 (5) SpO290%未満 (6) 低体温35℃以下 第2段階 解剖学的評価 (1) 開放性頭蓋骨骨折、頭蓋底骨折 (2) 顔面、気道熱傷 (3) 気管損傷、上下顎骨骨折 (4) 緊張性気胸、開放性気胸 (5) 心タンポナーデ (6) 気胸、血気胸 (7) フレイルチェスト (8) 腹腔内出血、腸管脱出 (9) 骨盤骨折 (10) 両側大腿骨骨折 (11) 上位脊髄損傷 (12) デグロービング損傷 (13) クラッシュ症候群 (14) 重要臓器、大血管損傷 (15) 四肢の切断 (16) 重症熱傷(Ⅱ度熱傷30%、Ⅲ度熱傷10%以上) |
区分Ⅱ 非緊急治療群 タグ識別色 黄色
緊急治療群に該当しないが、治療の遅延が生命危機に直接つながらないもの又は歩行不能者 |
区分Ⅲ 治療不要もしくは軽処置群 タグ識別色 緑色
歩行可能者で必ずしも専門医の治療を必要としないもの |
区分0 救命困難群あるいは死亡 タグ識別色 黒色
(1) 気道確保しても呼吸がないもの (2) 社会死状態 (3) 医師が死亡と判断したもの |
第3段階 受傷機転による対応
下記に該当する受傷機転の場合、区分Ⅲ(緑色)から区分Ⅱ(黄色)への変更を考慮する。
(1) 体幹部の挟圧
(2) 1肢以上の挟圧が4時間以上
(3) 爆発事故
(4) 高所墜落
(5) 異常温度環境
(6) 有毒ガス発生
(7) NBCによる汚染
第4段階 災害時要援護者の扱い
下記に該当する傷病者の場合、区分Ⅲ(緑色)から区分Ⅱ(黄色)への変更を考慮する。
(1) 小児
(2) 妊婦
(3) 基礎疾患のある傷病者
(4) 高齢者
(5) 旅行者
(6) 言葉の通じない外国人
別表第6号(第11条関係)
トリアージタグフロー図 ※ トリアージポスト、救急指揮所を配置しない場合は、現場指揮本部にて1枚目、2枚目を保存、管理するなど集団救急事故現場の状況に応じて、適宜に取扱うもの |
別表第7(第12条関係)
傷病者搬入搬出フロー図 ※ 傷病者集積場所を設置しない場合は、1次トリアージのみ実施するなど集団救急事故現場の状況に応じて、活動にあたるもの |